属人知を組織知へ、「水」を守るデジタル革新
【みおつくし工業用水コンセッション・三浦下水道コンセッション】経験・勘から脱却、客観データで水道管理の高度化に挑む

インフロニア ストラテジー&イノベーションは、デジタル技術やデータ利活用でインフロニアグループ全体を
支援しています。当サイトでは、インフロニアグループが牽引する業界の「ルールチェンジ」の取り組みや展望を、
随時ご紹介いたします。
What’s Changed
水道事業は複合的・構造的な問題を抱えており、これまでの高水準で安定的なサービスの提供が脅かされつつあります。そのような環境下においてインフロニアグループが運営するみおつくし工業用水コンセッションや、三浦下水道コンセッションをフィールドとし、デジタル技術を活用することで運営の標準化や業務の効率化を進めています。
Challenge & Change
日本の水道は世界と比較しても高い水準で維持され、生活・産業基盤を支える不可欠な存在として我々の社会を支えてきました。ところが現在、この重要なインフラは①技術者不足に伴う技術継承の断絶、②設備の老朽化と物価上昇、③人口減少に伴う収益減少という3つの問題に直面しており、その結果、大規模な道路陥没事故が発生する等、これまで当たり前のように存在してきた水道の存続は危機に瀕しつつあります。
-
① 技術者不足に伴う技術継承断絶のリスク
水道の維持管理には運転管理・管路・機械・電気・土木建築と様々な専門性を持つ技術者の知識と経験が不可欠です。そしてこれまでは熟練技術者の経験への依存度が大きく、個々の知識や判断に頼った管理が行われてきました。ところが多くの自治体でこうしたベテラン技術者の退職が進み、他方で人員削減や官民の給与格差等を要因とし若手技術者の確保が進んでおらず技術の継承が断絶するリスクが生じています。
-
② 設備の老朽化と費用の増大
高度経済成長期から整備が進んだ水道設備は法定耐用年数を超えるものが増える一方で、管路更新率は1%未満と低い水準にとどまっており老朽化が進んでいます。また水道の特徴として設備の多くが地下に埋設されており、その結果、調査・点検が難しく、正確な劣化診断が非常に難しいことも対応が後手となってしまう一つの要因となっています。そのうえ近年の物価上昇も重なり長期的視点に基づいた計画的な更新や改築に十分な予算を確保できないケースも生じています。
-
③ 人口減少に伴う収益減少
日本社会全体が抱える「人口減少」は、水道事業にも深刻な影響を及ぼしています。
地方では過疎化が進み、居住者の減少に伴って水道使用量が減少しており、加えて工場や事業所の縮小・撤退により工業用水の需要も減少傾向にあります。
このような状況の中、水道料金収入は減少し続けており、施設維持費や老朽化対策の原資確保が難しくなっています。一方で老朽化対策としての投資・激甚化する災害対策に伴う投資は不可避であり、コスト増に加えて収入減少という二重苦が各地の水道事業を圧迫しています。
こうした複合的・構造的な問題を解決すべく、インフロニア ストラテジー&イノベーションはインフロニア・ホールディングスがコンセッション事業という枠組みにより運営する水道事業をフィールドとし、「デジタル技術を活用した知見の標準化」に取り組んでいます。
施策概要
統合的な資産データ管理体制の構築
インフラの運営には、膨大かつ多種多様な資産の管理が欠かせません。管路、機械・電気設備、制御装置等、その数は数千、数万点に及びます。それぞれが異なる設置年代・構造・稼働環境を持ち、劣化の進行度合いや保守履歴も千差万別です。
このような資産群を効率的に維持・更新していくには、個々の資産の状態を正確に把握し、限られた経営資源(予算・人材・時間)を最も必要な箇所へと優先的に投下する必要があります。そのためには、各資産について基本情報(設置場所、仕様、設置年等)に加え、過去の点検記録、異常検知の履歴、修繕・更新の履歴等の多層的なデータを紐づけて一元的に管理することが不可欠です。
しかし、現場ではこれまで部門ごと、設備種別ごと、あるいは業務ごとに独立してデータが管理されていることが多く、横断的な可視化や分析が難しいのが実情でした。また、管理帳票が紙やスプレッドシートで分散して存在するケースも多く、情報の散在が意思決定の妨げになっていました。
こうした課題に対し、私たちはデジタル技術を活用することで資産管理の知見の標準化と資産情報の統合管理の実現を進めています。資産管理プラットフォームを通じて、すべての資産情報を構造的に整理・統合し、点検・修繕・運転履歴を可視化することでこれまで属人的に担当者の頭にあった情報を組織知とすることを進めています。
これにより、従来は経験と勘に依存していた意思決定が、客観的データに基づいた戦略的な意思決定へと進化し、そして属人性を低減し、誰もが同じ基準で判断・運用できる「持続可能なインフラマネジメント」の実現を目指しています。
水質管理最適化ソリューション
下水処理は、私たちの生活を支える重要なインフラの一つです。その処理方法は様々存在しますが、
主要な方法として「活性汚泥法」と呼ばれる、微生物の力を活用して有機汚濁物を分解・除去する仕組みがあります。
このプロセスにおいて鍵となるのが“空気”です。微生物が活発に働くには酸素が必要であり、その供給を担う送風機は、
下水処理場全体の電力消費の中でも大きな割合を占めています。
これまで、送風機の稼働は熟練技術者の経験に基づいて調整されてきました。気温や天気、流入負荷、水質データ等の情報をリアルタイムで読み取り、設備の状態を判断しながら最適な運転条件を見極めていく作業は、まさに“職人技”と呼べるものでした。しかしながら、技術者の高齢化と人材不足が進む中、このような属人的な運用に依存し続けることは大きなリスクとなり得ます。
そこで過去の運転実績データを体系的に整理し、すぐに引き出すことができるよう可視化し今設定すべき送風量をリコメンドする
ツールを構築し導入しました。これにより、天候や流入状況に応じた適正な送風量を設定し、電力消費を抑えつつ、安定的な
水質管理を実現可能にしました。また、技術者の運転判断をサポートする形で導入することで、属人化の解消と同時に
人材育成にも貢献しています。
私たちは、こうしたスマートな運転支援を通じて、環境負荷の軽減と経営効率の両立を実現し、持続可能な水環境インフラの構築に取り組んでいます。
今後の展望
今後、水道インフラを取り巻く環境は一層厳しさを増すと予想されます。その中で私たちは、複数の事業を運営する強みを活かし、事業間を横断してデータを蓄積・分析することにより資産管理の更なる高度化が可能と考えています。また、蓄積された運転データや修繕履歴をAIで解析することで、劣化予測や優先投資判断の高度化も可能と考えています。
水質管理の分野でも送風量調整の自動化、あるいは汚泥処理や脱水工程を含めたエネルギー最適化等の取組の拡がりが考えられます。こうしたテクノロジーの組み合わせにより、持続可能なインフラ運営モデルを社会に提供していきます。
私たちは「水」という普遍的な社会資本を次世代につなぐ責任を果たすため、現場力とデジタルの融合による革新を今後も加速してまいります。