徹底的なデータ把握でインフラ老朽化へ挑む 統合資産管理が支える社会の持続性
【愛知道路コンセッション】インフラ事業の持続可能な運営に向けて

インフロニア ストラテジー&イノベーションは、デジタル技術やデータ利活用でインフロニアグループ全体を
支援しています。当サイトでは、インフロニアグループが牽引する業界の「ルールチェンジ」の取り組みや展望を、
随時ご紹介いたします。
What’s Changed
高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化が進む中、限られた財源・人材で戦略的な維持管理を行うためにEAM(統合資産管理)の導入が注目されています。私たちは、資産情報の整理からシステム導入・BI連携までを現場起点で支援し、業務効率化と意思決定の高度化を実現。今後はAI技術の活用とエンジニア知見の融合による次世代インフラマネジメントを推進していきます。
Challenge & Change
高度経済成長期に集中的に整備された日本の道路や水道といった社会インフラは、現在その多くが築50年以上を迎え、深刻な老朽化の局面を迎えています。道路事業においては、管理延長が広く多数の資産を管理する必要がある一方で、保守・更新に必要な財源や技術者の確保が持続可能な維持管理の重要な課題となっています。
このような背景から、限られた予算・人材の中でも、必要な資産に、必要なタイミングで、必要な対策を講じる「予防的かつ戦略的な資産管理」が不可欠です。そのためには、資産ごとの信頼できるデータに基づく判断が重要であり、その中核にあるのが、資産を軸に維持管理に必要な情報を管理するEnterprise Asset Management(EAM)と呼ばれる「統合資産管理ソリューション」です。
EAM(Enterprise Asset Management)は、道路や水道といったインフラ資産の情報を一元管理し、計画的な維持管理・更新投資を支援するためのITプラットフォームです。よくあるケースとして、点検・修繕・故障などの個々の情報は管理しているが、資産と紐づかないため、どの資産でいくら使っているのか、今後の更新はいつ投資すべきかを資産単位で判断する難易度が高く、過剰・過少な予算や人員投下に繋がる場合があります。
一方、EAMでは基本となる資産台帳を整備し、病院のカルテのように各資産に点検・故障・修繕・更新などの履歴を紐付けつつ、発注コストなどお金の情報も紐付けることで、組織全体の業務量・コストを漏らさず管理できるようになります。さらに、予算立案・発注・請求などの業務プロセスをEAM中心で組み立てることにより、複数システムへのデータの二重入力やExcel集計の多重化を防止し、信頼できる諸元データに基づくデータドリブンマネジメントを加速させることが可能となります。
- インフラ資産の全体把握(見える化)
- 保全計画の最適化(予防保全型への転換等)
- 長期事業計画の見通し向上と費用対効果の分析
- 維持管理に関わる関係者間でのデータ共有
例えば、有料道路の維持管理を担う愛知道路コンセッション株式会社(通称:ARC)ではEAMを導入することで省人化オペレーションを実現しています。EAM導入前は、担当者がExcelでデータ集計、帳票作成、押印回覧を回していたが、現在は全ての起案・承認プロセスがEAMを通じて行われています。EAMにより担当者は数値の集計等の作業時間を削減し、データに基づく分析や計画策定等の付加価値業務にシフトしています。これらの省人化オペレーションモデルは、人口減少や熟練技術者の退職等で人手不足に直面している地方自治体等においても、職員の世代交代による属人化の解消や、データに基づく説明責任の遂行という課題解決にも重要な役割を果たすと考えています。
施策推進に向けた歩み
私たちは、これまで愛知道路コンセッション株式会社におけるEAM導入支援を進めてきました。特に、以下のような段階を踏んだ実証的アプローチを大切にしています。
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① 資産情報の現状把握
紙台帳やExcelで管理されていた資産情報を整理・構造化。既存図面との統合も支援します。
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② 維持管理業務フローの可視化
点検、修繕、報告、外注契約等業務の全体像を洗い出しつつ、業務に合わせたシステムを構築するのではなく、システムに業務を合わせる方針で業務整理を行うことで、過度なシステムの作り込みを防ぎ、EAMの必要機能を厳選します。
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③ システム設計・試行導入
現場職員や維持管理事業者と議論を重ねながら、EAMの設定項目や帳票を柔軟に設計。運用試行を通じて改善を重ねます。
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④ 段階的な本格運用と教育支援
導入後も、利用状況をモニタリングしながら、業務マニュアルの整備や職員研修を支援します。
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⑤ EAMデータのBI可視化
データを蓄積・管理するだけでなく、グラフや数値で可視化するツールであるBI(Business Intelligence)ダッシュボードと組み合わせることで、データに基づく業務判断の高度化を支援します。
例えば、長期事業計画、予実管理、発注進捗管理、単価管理、担当者の稼働負荷管理等、組織として管理すべき情報をBI化し日々の業務で活用頂いています。
このような「業務起点」の導入スタイルにより、現場負荷を抑えながら、確実なデジタル化と業務改革を両立しています。
※本図の数値はイメージであり、実際のデータを示すものではありません。
このように、EAMは単なる「記録ツール」ではなく、戦略的意思決定を支える経営資源として活用されています。
今後の展望
今後、EAMは単体のシステムにとどまらず、センサーデータ、ドローン画像、AI解析、等と連携し、より高度な技術に基づくインフラマネジメントを実現していく時代に入ります。私たちは技術の進化を踏まえつつ、エンジニアの知見が非常に重要だと考えており、人と技術の融合を志向しています。例えば、以下のような未来を考えています
- エンジニア知見の加味による劣化予測と修繕候補の優先順位付け
- IoTセンサーとの連携による資産管理・計画策定の精度向上
私たちは、インフラ維持管理の現場と経営の両方を支えるEAMの構築・導入支援を通じて、持続可能で安心な社会インフラの実現を目指しています。道路は生活を支える重要なインフラ資産であり、老朽化という社会課題に対して、戦略的に管理する視点が次の時代のインフラ戦略を形づくる一つのキーポイントであると捉えて取り組みを推進します。