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上下水道事業を支える技術者不足のリスク
上下水道事業では、管路や施設の老朽化が問題として注目されることが多いですが、それらを維持・更新する「ヒト」、特に技術者の存在も欠かせません。
施設の日々の運転管理や水質管理、設備の維持管理など事業運営には高度な技術的判断が求められます。もちろん業務の一部は民間事業者へ委託し、官民で協力して事業は運営されますが、日本が誇る高品質の上下水道サービスを維持し続けるためには自治体が技術力を保有し続けることは必須です。
しかし、自治体の技術職員は年々減少しています。
下図は全国の上下水道事業に携わる職員数の推移ならびに技術職員数を示した図表になります。
まず推移をみると上水道事業では1980年に7.6万人だった職員数が、2023年には4.2万人と44%減少しています。下水道事業(右側)も同様に、1997年に4.4万人だった職員数が、2023年には2.7万人と39%減少しています。
職員数の減少は、人口減少や行政改革に伴う定員適正化に加え、施設運転や維持管理の効率化が進んだことも背景にありますが、各自治体が職員数を確保することに苦慮していることには間違いないと考えられます。
また技術職員数を見ると問題がより顕著にわかります。1-3万人未満の小規模自治体においては技術系職員が既に3人未満、0.5万人未満の自治体においては平均1人未満、すなわち一人も存在していない自治体が数多くあります。全国の自治体にて技術者不足は確かな問題といえます。
加えて、人数だけでなく年齢構成も問題といえます。例えば水道事業では全国の職員の約4割が50歳以上を占めています。今後ベテラン職員の退職が進むことで、いわゆる暗黙知とも呼ばれるノウハウが徐々に消失していくことも懸念されます。
技術職員がいなくとも、施設の運転、設備点検、修繕、設計、施工管理など、多くの業務は民間事業者へ委託することで事業は継続されています。つまり、「技術職員がいない=事業が止まる」というわけではありません。
しかし前述の通り、設備更新の要否や時期の判断、工事内容や委託費用の妥当性の評価、中長期的な更新計画の策定など、最適な費用で高品質なサービスを提供するためには自治体の技術力の維持は必要です。
これらの判断を十分に行えなくなると、必要以上の設備更新や過剰な委託費用につながる恐れがあります。逆に更新を先送りにした場合、故障や事故のリスクが高まり、結果としてより大きな更新費用が必要になることもあります。
すなわち技術職員不足は、コスト増加やサービス品質の低下につながるリスクをどうしても高めてしまいます。
しかしながら、地方自治体での技術人材の確保は年々難しくなっています。
下図は、技術者の給与を同一役職別に官民で比較したグラフになります。技術者の給与は、民間の方が30%程度高く、役職が上がるほど給与差は拡大する傾向があります。つまり、自治体は技術者を採用するだけでなく、経験を積んだ人材を長期間確保することも難しい状況にあります。
また、多くの自治体では数年ごとの人事異動があるため、専門技術を長期間蓄積しにくいという制度的な問題もあります。こうした制度が技術力を高めたいと考える技術者が民間企業への転職を考えてしまう要因になっているかもしれません。
まとめると、そもそも人口減少が進む環境下であることに加えて、官民の給与格差などの要因から自治体が十分な技術者を確保・育成し続けることは難しく、自治体が発注者として備えるべき技術的な判断能力が弱まることが懸念されます。そして小さい自治体ほど、この問題は顕著であり、すでに表面化している問題です。言い換えると個々の自治体がそれぞれ人材を抱えることを前提とした従来の事業運営には限界があり、技術者やノウハウを広域で活用できる仕組みや、民間の技術力をより長期的に活用する仕組みの重要性が高まっているといえます。
PPP/PFI推進アクションプラン(令和8年度改訂版)ではウォーターPPPの広域化案件の増加を促す様々な記述が新たに追加されています。この背景には人材確保の難しさという問題認識もあるものと考えられます。